やばいやばいやばい、目茶苦茶怒られる気がする。
多分リョーマは遅刻しただろうし、部長達にも怒られただろう。
ただでさえそれで機嫌が悪いのに、加えて私がすぐに合流しなかったとなれば……!


「あれ、リョーマ?」


とりあえず普通に驚いてみたけれど、内心は冷や汗だらだらだ。
そんな私とはまた別の理由で、不動峰のみんなの驚きようはすごかった。


「青学……!」
「こいつ、何で青学ジャージ着てるんだ!?」


ざわついている不動峰集団の中、いち早く立ち直った橘さんが、ぎこちなくこちらを見る。


「……、あいつが『お世話になっている家の子』か?」
「はい、そうですけど?」
「アンタ誰?何でと一緒にいるわけ?」


私達の会話に割り込むように口を開いたリョーマ、噛みつかんばかりの口調だ。
うーわー、リョーマったらめっちゃ睨んでる……!


「不動峰の橘だ。お前は   青学のレギュラーか?」
「どうでもいいだろ。   、こっち」


恐いもの知らずのリョーマ、橘さんの質問は思いっきりスルー。
それどころか、ガンたれながら私に手を差し伸べた。


「え……でも……」


私が今そっちに行ったら、なんか後ですごいことになりそうなんですけど。
いろんな意味で。

そんなことを思いつつ橘さんを見上げると、小さく苦笑される。


「早く!」
「行ってやれ。俺達は構わない」


リョーマの声が少し大きくなった。
少しだけ怖くて小さく震えると、橘さんがくしゃりと頭をなでてくれる。


「あの……もしかして、青学ってそこそこ有名なんですか?」
「とても有名だ。強豪校だぞ」


それだけを言い、今度は背中を押された。
ようやく観念して、早く来いオーラ(めちゃめちゃ怖いんだよ馬鹿!)を出しまくっているリョーマにそろそろと近づく。


リョーマまであと少しというところで、じれたように手を伸ばされた。
反射的に引っこめた手をガッ!とつかまれる(ヒィ!)


「気安くに近寄らないでよね」


捨てゼリフのように言うと、リョーマは問答無用で歩き出した。
ぐいぐいと引っ張られながらも、頑張って後ろを振り向いて手を振る。


「あの、えっと、またね!」


杏ちゃんが手を振り返してくれて、とりあえず一安心。
無言でずんずんと進むリョーマに、口を尖らせながら抗議する。


「リョーマ、あの人達私の友達なんだけど」
「だからって、決勝も俺達の敵と一緒にいるわけ?」
「敵?」


んな大袈裟な。


そんな気持ちで言った言葉を、リョーマは都合よく誤解してくれたようだった。


「そ。決勝、青学と不動峰だよ」
「あー……。ごめん、全っ然知らなかった」
「ったく……何であいつらと一緒にいたわけ?」
「迷子になってたら、ちょうどみんなが通りかかったの。元々不動峰のみんなとは知り合いだったし、リョーマ達が勝ってるかどうかもわかなかったから」


リョーマ達のことを忘れてたわけじゃないよ?


いまだに左手をつかまれた状態だったので、空いた右手でリョーマをなでる。
それでもまだ不満そうだったので、今度はぎゅっとしてみた(もちろん片手)


「あのね、リョーマ。あの人達は、今のリョーマにとってはただの対戦相手かもしれない。でも、そうなる以前に、私はみんなと友達になってたんだよ」
   わかってるよ」
「それじゃ、もう会うなとか言わないよね?」


本当に言い出しかねないリョーマに、先手を打ってそう尋ねる。
言ったら泣いてやる!

無言でじっと見つめること数秒、リョーマが小さく息を吐く。


「OK、言わない」


肩をすくめてうなずいたリョーマは、今度は痛くない程度に私の手を引いて歩き出した。
強くつかまれすぎて赤くなった手首を見て、途端にしょげたような顔になる。


「……ごめん……」
「別にいいって」


泣きそうに顔を歪めたリョーマに、ぱたぱたと手を振る。


別にずっと跡になるというわけではないし、小さい怪我は慣れているし。
何より、これから大怪我する予定の奴に心配されたくない!(真顔)


それに。


「これだけリョーマが心配してくれたってことでしょ?だから、何か嬉しいんだ」


どうでもいい相手には、心配なんかしない。


この痛みもリョーマの気持ちだと思うと、不謹慎だけど顔がゆるむ。
ありがとうと癖っ毛気味の黒髪をなでると、ふいと顔をそらされた。




「……変な……っ!」




言い草は酷いけれど、赤い顔が可愛いから、別にいいや!