改めて名乗って何故か部屋までもらって、数日が経った。
ソフィーとも仲良くなれたし、マイケルもだんだん懐いてきてくれているようだし、嬉しいことこの上ない。
などと思ってがほくほくしていた ら 。
「うわあああああああああ!?」
ハウルがものすごい悲鳴をあげて駆け下りてきた。
その髪の毛は、鮮やかなオレンジ色。
あら、キヨみたい じゃなくて。
そういえばあったな、こんなイベント。
そんなことを思いつつが傍観する先で、ハウルは頭を抱えて嘆き始めた。
「美しくなきゃ、意味なんかない……!」
悲痛に呟いたハウルに同調するように、部屋の中に闇の気配が満ちていく。
慣れ親しんだ気配に顔をほころばせかけたは、しかしその様子に眉を顰めた。
「もう知らない!!」
「 泣いている……?」
ソフィーの叫び声にかぶった呟きは、誰の耳にも届かずにかき消える。
闇の眷属が、無理矢理呼び出されたことに嘆いている。
どうしてそっとしておいてくれないのかと、悲しんでいる。
このままでは帰り道がわからなくなると、切ない悲鳴をあげている。
いつの間にかハウル以外に誰もいなくなった室内で、は小さくため息をついた。
今はとにかく、精霊達を還すのが先だ。
紋章の力を開放して、精霊達に話しかける。
どうしたの?
つらい、つらい、つらい。
どうして私達は、こんな時しか喚ばれないの。
帰りたい、帰りたい。
切なく訴える精霊に一つうなずいて、源への道を示してやる。
召喚のための扉を開くのは無理でも、精霊を初源に導くことはできた。
「お帰り、在るべき場所へ」
のその一言で、精霊達が喜びにうち震える。
我先にと飛びこんで行った精霊達を見送って、はでろでろになっているハウルに向き直った。
「ハウル、ハウル」
「……聞こえてないよ、」
「困ったねえ。そんなに精霊をいじめないでって言いたかったんだけど……」
小さく息を吐いたは、服や手が汚れるのも構わずにひざまずいてハウルに触れた。
「ハウル」
力強い呼びかけに、ハウルがぴくりと反応する。
「ハウル。闇の精霊は、人を傷つけたくなんかないの。お願いだから、わがままで呼び出すのはやめてあげて」
「わが、まま……」
「うん。君のそれ、単なる癇癪と一緒だよ。もうちょっと大人になろう」
ぽつりと呟いたハウルににこりと笑い、はよいせと立ち上がった。
「カルシファー、お風呂にお湯お願い」
「え!?が入れるのか!?」
「しょうがないでしょう、他に誰もいないんだから」
病人の介護だと思えば何のその。
治療で丸裸の男性も見たことがあるから、特段恥じらいも感じない。
「つまりは動けない人の補助でしょ。平気平気」
「手伝うわ、!」
「助かるよ。ありがとう、ソフィー」
腕まくりをしてハウルを担ぎあげようとしたところで、ソフィーが飛びこんできた。
彼女自身もずぶ濡れで、早く身体を温めなければいけない状態だ。
「じゃあ、ハウルを包む大きな布を持ってきて。それでくるんで、上まで運ぶから。マイケル、カルシファーにもっと薪を渡してくれる?」
「はい!」
「わかったわ!」
にわかに慌ただしくなった室内で、はハウルの呼吸を確認する。
こんなにでろでろでも、きちんと呼吸は確保できているようだ。
それにしても溶けるだなんて、どんなびっくり人間だ。
ソフィーが床に広げた布の中に3人がかりでハウルを移し、ぐるぐる巻きにして担ぎあげる。
「よい……っせ!」
「!?無理よ、私も手伝う」
「いいからいいから。ソフィーおばあちゃんは、ゆっくり身体を温めてて?」
「じゃ、じゃあ僕が……!」
「10歳そこそこの子供に手伝わせるほど、私も鬼畜じゃありません。ソフィーに温かい飲み物を出してあげて」
確かに1人で運ぶのはかなりきついが、短い距離ならなんとかいけそうだ。
何かを言いたげなマイケルに笑って、気合いを入れてぐったりとした身体を担ぎ上げた。
ぎしぎしと悲鳴をあげる肩を無視して、俵担ぎにしたまま階段を上る。
「重い……っ!」
意識があるなら自分で歩け!
あ、やっぱ床が汚れるからやめて!
魔法で自分を軽くして!
そんな一人ボケツッコミをしながらハウルを浴槽に投げ入れ、巻きつけていた布を取ろうと手をかけた。
あまりにも厳重に巻きすぎて、このままでは窒息ししそうだ。
そんなにハウルが憎いのか、マイケル。
懸命に巻きつけていた子供を思い出して、ちょっぴり遠い目になってしまった。
上半身から張りつく布を引きはがし、さて下の複雑怪奇に絡まっている部分をと思った時、ハウルの手がゆるりと動いた。
「……いい。後は、自分でやるよ……」
「できるの?じゃあまず、顔と手から綺麗にしようか」
いまだにでろでろのハウルに笑って、シャワーノズルから勢いよくお湯を出す。
問答無用で顔に向けると、ハウルは驚いたように目を見開いたまま固まってしまった。
「ほら、こすってこすって」
ノズルをそらさずにが促すと、のろのろと手が上に上がる。
何度も何度もこすって、ようやく(顔と手だけ)元の状態に戻ったハウルに満足し、はタオルと石鹸を渡した。
「じゃあ、後は自分で綺麗にしてね」
「……ありがとう、」
「どういたしまして。 その黒髪、綺麗でいいと思うよ」
大体、昔のハウルは黒髪のはずなのだ。
一体いつ金髪にしたのだろう。
というか、美しさへのこだわりはいつから?
ああ、サリマン先生の陰謀ですか。
金髪のおかっぱ美少年を山ほどはべらせていた(気がする)(一見上品な)老婆を思い出し、原作だと性別自体が違うんだがと思い出す。
ところ変われば、趣味思考もかなり変わるらしい。
まったく、余計なことをしてくれたものだ、あのショタコンめ。
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