今日はドッヂボール大会。
適当に勢いのなさそうなボールに当たって、さっさと外野に出る。
だって痛いもん、ボール当たるの。
裕介はというと、やっぱりやる気なさげに内野を逃げ回っている。
その裕介にボールを当てようとしている男子達の目が血走っているのは気のせいだろうか。
いや、気のせいじゃないだろう。
だって、裕介がひらりと避ける度に、「きゃー!!」とか「椎名くーん!!」とかうるさいもん。
誰か黙らせろ、あのうるさい集団。
あ、裕介がさっさと当たればいいのか。
でも、当たれば当たったでうるさそうだ。
どうせなら休めばよかったのに、裕介め。
……しまった、私が休めばよかったのか。
適当に「生理が重いです」とか言っとけばよかった。
馬鹿正直に参加した私の馬鹿。
そういえばこの間、吉井のお姉さんに、変態に会ったことを言ったら大騒ぎされた。
「だ、大丈夫だった!?」とか、「気持ち悪いもの見ちゃったね、悪い人はお姉さんがやっつけてあげるからね!」とか、「警察!!警察!!」とかなんか混乱してたから、無事に撃退できたことを伝えておいた。
コンフュって実際にかけるとこういう風になるんだろうか。
あ、コンフュって、ファイナルファンタジーの混乱魔法ね。
鳥の名前みたいでちょっと可愛くて好き。
涙目のお姉さんにぎゅうぎゅうと抱きしめられながら、いい人だなあと思ったのはいい思い出だ。
私、奈緒子お姉さんのこと、結構好きかもしれない。
まあそれはさておき、目下の目標はいかにしてこのドッヂボール大会を無事に終わらせるかだ。
だって、ボールは主にガキ大将共がやりとりしてるし。
外野暇だし。
……ああ、暇でちょうどいいのか。
ぼんやりしてたら、いつの間にか試合終了していた。
「椎名君、格好いいー!!」とかいう声が飛び交っているあたり、どうやらまた裕介が活躍したらしい。
何気に運動神経いいしなあ、裕介。
女の子に囲まれている裕介は迷惑そうだけど、周りの男子はハンカチでも噛みしめそうな勢いで悔しがっている。
いやあ、イケメンって得だよね!!
たいして活躍しなくても、ここ一番でばしっと決めればいいんだもんね!!
さーてと、さっさと着替えて帰ろっと。
今日は美麗ママの新作の試着をする日なのだ。
私に似合うとは思えないけど、美麗ママが喜ぶし。
ふわふわして可愛い服は、私も好きだし。
裕介も何故か満足そうな顔をするのが、ちょっぴり嬉しい。
……べ、別に、裕介が好きとかそういうんじゃないから!!
イケメンの満足そうな顔が眼福なだけだから!!
そこのところ、勘違いしないで!!
淡い緑色の可愛い服を着て、写真をぱちり。
次はシックな濃紺の服を着て、ちょっとおすましでぱちり。
ピンクの女の子らしい服を着て、上目遣いに笑顔でぱちり。
モデルもどきも慣れたものだ。
写真がどうなっているのかは知らないけど、多分デザイナーの皆さんがあれこれ検討しているんだろう。
「はーいちゃん、これで最後ねー!」
「らじゃです」
美麗ママのハイテンションなぐぐっと親指を立てて、薄いシフォン生地を何枚も重ねたこの服、すごく可愛い。
今までので一番好きかも。
そんなことをぽろりと言ったら、美麗ママに「じゃあプレゼントするわ!!」なんて言われてしまった。
いやいやいやいや、高すぎますから。
いくらなんでももらえませんから。
必死に拒否する私に、いつの間にか帰っていた裕介が一言。
「もらっとけばいいじゃん、。どうせもうすぐパーティーだし、それ着て行けば?」
「うぐっ……!!」
しまった、美麗ママのパーティーのことを忘れていた。
確かに毎年ひっそり参加しているけど、今年はまだドレスの準備をしていない。
「……いただきます」
ものすごく負けた気がするのは何故だろう。
屈辱感でいっぱいになるのは何故だろう。
悔しいので、そのまま着て帰ってやった。
途中で奈緒子お姉さんに会ったから、ちゃんと挨拶しておきました。
うん、私いい子。
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