私にもお友達はいます。
裕介の観察日記みたいなことしか呟いてないから勘違いされそうなんですけど、私にもれっきとしたお友達がいます。
まあ、向こうが一方的に私を気に入って、溺愛してくれてるだけなんですけど。
でも、私も彼女のことは大好きです。
だって、私を平凡なモブたらしめてくれているのは、彼女ならぬ「ひめちゃん」なんですから。
ひめちゃんは人が大嫌い。
だから、誰かがいるところでは、絶対に出没しない。
超絶和風美少女なのにもったいない。
裕介と並べば、誰もが涎を垂らして喜ぶほどの美男美女っぷりなのに!!
……いや、ひめちゃんの前では、逆に裕介の方が霞むかもしれない。
それくらいの美少女っぷり。
そんな彼女が私を気に入ってくれたのは……うん、まあ、察してください。
単に相性が良かったとだけ、すごく控え目に表現しておきます。
それはともかく、最近ちょっと気になる男の子がいる。
断じて恋ではない。
照れでも何でもなく、純粋に心配になるようなたぐいの「気になる」だ。
身体が弱いらしくてほとんど学校に来ないけれど、この間廊下ですれ違ったときに「ん?」って違和感。
ひめちゃん様々だ。
誰もいない屋上までのんびりと歩いて、しっかり鍵を閉める。
私の鍵の閉め方だと、あのガキ大将達も入ってこれないからあら不思議。
これもひめちゃんパワーとしておこう。
私は普通でいたいもの!
「ひめちゃん」
「!!ああ今日も可愛い!私の大好きないい匂いがする!!本当はちょっと眠かったけど、に呼ばれたらそんなの吹っ飛んじゃった!!」
超絶美少女に抱きしめられるモブ。
これって、端から見たらどんな光景なんだろう。
誰かに見せてあげたいけど、ひめちゃんは極度の人間嫌いだからなあ。
「今日はすごくハイテンションだね、ひめちゃん」
「久しぶりに会うんだもの、ちょっとぐらい性格が変わってた方がおもしろいと思わない?」
「残念ながら、見るのが私しかいないから、おもしろくはないよ」
「なぁんだ、つまんないのー」
口を尖らせたひめちゃんも可愛い。
「まあ、冗談はともかく……、あんたは絶対、あの男に関わっちゃ駄目よ」
「何で?」
「に私以外の奴の匂いがつくの、嫌」
「なるほど、わかった」
多分、あの子は近いうちに厄介事に巻き込まれるんだろう。
んでもって、それに裕介達が首を突っ込むんだろう。
好奇心は猫も殺すって言葉、あいつら知らないのかな?
そのうち死んじゃったら、裕介の分だけはお通夜もお葬式も行こう。
美麗ママも聡パパも、きっとこの世の終わりみたいな気持ちになってるから。
その日の帰り、あの男の子と仲のいい女の子が、二人揃って下校するところにはち合わせた。
元々知り合いっていうわけでもないし、そのまま無視して通り過ぎようとしたんだけれど。
「……………………」
「…………何か?」
女の子の方が、何故かまじまじとこちらを見てくる。
「カンナ」
「だってユキ、日向が……」
こそこそと交わされる会話。
ユキ君がカンナちゃんを諫めているようだ。
うんうん、ユキ君偉い。
小首を傾げて様子を見守っていると、吉井のお姉さんがやってきた。
「あら、ちゃん!」
「こんにちは、お姉さん」
「こんにちは。お友達?」
にこにこと笑いかけてくるお姉さん。
太陽みたいに温かい。
きっとこの人、人の悪意とかあんまり知らないんだろうなあ。
「同じ学年の子だよ。多分」
うん、多分。
お姉さんの登場はちょうどタイミングが良かったので、そのまま手をつないで帰ることになった。
「ちゃん、コロッケ好き?」
「うん」
ほくほくしたコロッケは大好きだったから素直にうなずくと、お姉さんは笑顔でごちそうしてくれた。
公園のベンチに座って、はふはふと冷ましながら食べることしばし。
「?何やってんの」
「あ、裕介。お姉さんにコロッケ買ってもらった」
珍しく一人だった裕介に捕獲され、お姉さんとは離ればなれに。
あ、お礼言うの忘れた……。
「……そういえば、コロッケ好きだったね」
「うん」
「今度買ってあげるよ」
「ありがとう」
「だから、誰彼構わずついていかないこと」
「……お姉さんは知り合いだよ?」
「あの人は論外。を守るどころか、一緒にちょろまかされて終わりだろ」
「……なるほど」
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