隣のクラスにDQNな名前の転校生が来たらしい。
いや、今でもその類の名前はあふれてるから、またかーで終わる話なんだけど。
うちの学校は珍しくも普通の名前が多いし、だからこそDQNネームはその分目立つ。

……ところで、DQNって何?

みんながDQNDQN言うから使ってるけど、いまいち意味がよくわからない。
ちなみに、読み方は「ドキュン」らしい。
裕介に訊いたらすごく微妙な顔をされた。


「どこでそんな言葉を……」
「割と普通に使われてるよ。んで、どういう意味なの?」
「……一見格好いい、あるいは格好いいと思ってつけたけど、冷静に考えると非常識で恥ずかしい名前をDQNネームって呼ぶんだよ。そんなのどうでもいいから、はこれから絶対その言葉を使わないでね」
「何で?」
「相手を蔑む言葉だから」
「わかった」


妙に迫力があった。
嫌だとは言えない雰囲気だった。
美形の威圧怖い。
見慣れてても怖い。

うなずいたら満足そうに目を細めたけれど、裕介は一体私に何を求めてるんだろう?
首を傾げながら、ジュースを一口ごくり。
うーん、やっぱり裕介の家のジュースは最高。

主にお歳暮の時、椎名家にはあっちこっちから贈り物が来る。
もちろん全部高級品。
裕介がいるから、子供向けの贈り物もたくさん来る。
その中のジュースが絶品なんだ!

ペットボトルとか缶とかのとは全然違って、お酒の一升瓶みたいなのに入ってる。
ちなみに、私のお気に入りは白桃味だ。
素直に桃味って書けばいいのにとは思うけれど、もしかしたら黄色い桃もあるのかもしれない。うん。
裕介はリンゴ味を飲んでいる。


「一口ちょうだい」
「ん」


裕介からコップをもらって、そのままごくり。
砂糖を使ってないから爽やかな甘さだ。


、これ好きだよね」
「だっておいしいじゃん」
「じゃ、また今度もらっておくから」
「ありがと」


よしよし、これでまたジュースが飲めるぞ。
ガキ大将が来ると、あっという間になくなっちゃうもんね。


転校生はどういう子なのか、やっぱり気になるわけで。
裕介は見ればすぐにわかるって言ってたけど……うん、本当だった。
一人だけ高そうな服を着て、クラスの中でぽつんとひとりぼっち。

寂しくないのかなと思って声をかけようとしたけれど、その前にひめちゃんが待ったをかける。
どうしてかは、家に帰ってから教えてくれた。


「あの子は駄目」
「どうして?」
「いけ好かない」
「なるほど、わかった」


つまり、あの子は私と同じか。
ひめちゃん、好き嫌い激しいからなあ……。


「ねえ、?」
「何?」
「あの子は、本当に駄目よ。あれはよくないものだから」
「……珍しいね、ひめちゃんがそこまで言うの」
「私とは相容れないもの。まったく、何だってあんな子供が連れてるんだか」


滅多に見ない、ひめちゃんの本気で怒った顔。
こんなに怒ったのはいつぶりだろう?

   ああ、あれか。
イラズの森で変なのに絡まれた時以来か。

数年前の事件を思い出して遠い目をしていたら、お母さんに買い物を頼まれた。
餃子なのに胡椒がないのは大問題だよね、うん。

こんばんはーと吉井のお姉さんに挨拶をして、商店街に向かう。
そういえば、最近感じのいい外人さんによく会うんだよね。
意外にちゃんと日本語も話せて礼儀正しくて、商店街でも人気者だ。

今日は会えるかなーと期待しながら歩いていたら、向こうから転校生が大股で歩いてきた。


「あ」


思わずもらした小さな声に、ひめちゃんが無視しろと伝えてくる。
どうせあっちは私を知らないだろうし、積極的に関わりたくもないから、言われた通りに無視。
すれ違う時にちらりと見えた顔は、裕介にはちょっと負けるけど美人だった。


「……もったいないなあ」


あんなに可愛いのに、ひめちゃんに嫌われちゃうなんて。