遠足で誰かが行方不明になったり、それを裕介達が探しに行ったりと、ばたばたした日がしばらく続いて。
今日は久しぶりに、美麗ママとケーキ作りをしている。
聡パパにあげるのと頬を染めた美麗ママ……うん、文句なしに美人だよ。
「ちゃん、トッピングは苺がいいかしら?それとも木イチゴ?」
「聡パパはどっちでも喜ぶと思うけど……お酒が入ってるから、木イチゴの方がいいんじゃないかなあ」
苺にお酒は似合わない。
なんとなくだけど。
木イチゴはこう、大人の甘酸っぱさって感じがする。
テレビに洗脳されているのは認めるよ、だって木イチゴのジャムは大好きだもの。
「あら、そう?それなら、苺の方はお茶の時に食べましょうか」
「うん」
よし、あまおうゲット。
美麗ママにばれないように小さくガッツポーズをして、私もタルト生地の上にせっせとブルーベリーを乗せていく。
ゲームのしすぎで目が疲れ気味だから、無性に食べたくなったんだよね。
笑顔で高級品を用意してくれた美麗ママ、大好き。
美麗ママと一緒に盛りつけ具合を確認していたら、ガキ大将達との遊びから帰ってきたらしい裕介が顔を覗かせた。
「、まだできないの?」
「冷ました方がおいしいと思うよ。飾り付けはもうすぐ終わるけど」
「そう」
食べたそうな目をしてきたけど、気にしない。
これは私が私のために作ったタルトだ。
なんで裕介に催促されなきゃいけないんだ、理不尽すぎる。
「冷めたらみんなでお茶にしましょうね、ちゃん」
「うん。キャラメルのお茶がいいな」
「あるわよ!用意しておくわね」
「やった!」
キャラメルのお茶にキャラメルをたっぷり入れて飲むのが大好き。
裕介は嫌そうな顔をするけど、匂いがキャラメルなのに味がキャラメルじゃないなんて詐欺すぎるじゃないか。
これは正義です、正義。
美麗ママも何も言わないし、裕介にも文句は言わせない。
冷めるのを待つ間、裕介から地獄堂の品揃えについてちょっとだけ聞いてみた。
……ホルマリン漬けとかあれだよね、マッドサイエンティストだよね。
実物を見たことはないけど、かなり気持ち悪い、らしい。
どうして裕介達は平気なんだ。
「慣れだよ、慣れ」
「慣れるぐらい入り浸りたくない」
「まあ、否定はしないけど。人が来ない方が集中して読めるし、こっちとしてはありがたいよ」
肩をすくめた裕介の言葉からすると、どうやら日がな一日あそこの本を読んでいるようだ。
…………将来マッドサイエンティストにならないでよ、裕介。
「裕介、ちゃん、お茶にしましょう。聡さんも呼んできて?」
「はーい!」
書斎でお仕事をしている聡パパを呼びに行くと、なんか難しそうな顔をしてパソコンに向かっていたのに、ぱっと振り向いて小さく笑いかけてくれた。
ああ、聡パパほんとに癒される。
美麗ママがベタ惚れなのもわかるよ、だって私もこんなお父さんほしいもの。
ダンディなのに癒し系、素敵すぎる。
裕介も将来こういう風に……ならなくていいや、それはそれで気持ち悪い。
癒し系の裕介とか想像もつかない。
どちらかといえば、リョーチンとかいうガキ大将の仲間その2の方が癒し系になりそうだ。
「ああ、お茶の時間かな?」
「うん。美麗ママと一緒にケーキ作ったの」
木イチゴのだと伝えると、大きな手でゆっくりと頭をなでられた。
原稿を上書き保存して、パソコンをスリープさせた聡パパとリビングに戻る。
キャラメルのお茶の匂いがして思わず歓声を上げると、裕介に呆れた目をされた。
綺麗に切り分けられているのは、美麗ママのケーキ。
それから何故か、私が作ったタルトも。
2皿ずつ置いてあるということは、パパママ&私と裕介という組み合わせだろうか。
1ホール全部自分で食べる気満々だったからちょっと残念だったけど、まあ美麗ママが切り分けたんだろうからしょうがない。
何より、綺麗にヘタをとったあまおうが盛られている方が大事だ。
さすが美麗ママ、わかってる。
自分で作ったタルトは生地が若干分厚かったりゼラチンが多すぎたりしたけど、味自体は我ながらいい出来だ。
うちのお母さんとだとこうはうまくいかないから、やっぱり教え方って重要なんだなあとしみじみしてしまう。
美麗ママからケーキを一口もらって、私のタルトも一口あげて。
向かい側で裕介達も同じことをしていたけれど、裕介、それ、取りすぎだと思う……。
「おいしーい!ちゃん、うちの子になっちゃいなさいよ!」
「ちゃんは料理上手だね」
「本当ね。ほら、裕介のお嫁さんはどう?我が息子ながら顔はいいし、結構優良物件だと思うわよ?」
「えー……」
ぐいぐいと推してくる美麗ママから思わず仰け反って離れると、反対側でも聡パパもさりげなくうなずいている。
裕介はというと、ものすごくどうでも良さそうな顔でタルトをつついていた。
「……美麗ママも聡パパも好きだけど、裕介かあ……想像つかない」
「ま、お互い売れ残ったら考えればいいんじゃない?」
「うん」
がっかりしている美麗ママには悪いけど、早めに家に帰ってひめちゃんにタルトをあげなければ。
今はどこにも見えないけど、盛大に文句を言われそうな気がする。
「どうせはぼんやりして婚期逃すに決まってるんだから」
「あら裕介、冴えてるわね!」
悪口言われてる気もするけど、まあいいや。
早く帰ってひめちゃんで癒されよう。
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