「ちょっといいかな」


学校からの帰り道、コンビニでお菓子を買って出たところで呼び止められた。
振り向いたら、ものすごく美形のお兄さんだった。

裕介が大人になったら勝てるだろうか、多分どっこいどっこいかな。
身内の欲目で裕介が勝ちってことで。

どうでもいいことを考えながら首を傾げたら、地獄堂の場所を聞かれた。
以前何度か来たことがあるんだけど、どうも道がわからなくなった……らしい。

やだ、うっかりさん。
吉井のお姉さんを思い出してしまった。
あのお姉さん、時々迷子になってそうだよね。


「えーっと……案内します」


口で説明しようと思ったけど、道を思い出してみたら意外にめんどくさかった。
私なら言われても覚えられない。


裕介達いるかなあ、めんどくさいことにならないかなあ。
地獄堂に何回も行ってるなんてまともな人じゃないだろうし(あそこの薬はよく効くけど、遠くからわざわざって程でもないと思う)、また面倒事かなあ。
さささっと連れて行って、人体模型が見えるぎりぎりのところで別れようとすると、何故かまた呼び止められた。


「君は、神社の子かい?」
「ううん、違います。神社ならあっちですよ?」
「ああいや、神社に用事があるわけじゃないんだ。ただ、君にとてもいい存在が寄り添っているように感じたからね」


……やばい、電波系だこの人。

イケメンでもこれはない。
ひめちゃんのことを言ってるのかもしれないけれど、初対面の相手に言うようなことじゃないだろう。
電波系で地獄堂の関係者、これはもう早めにおさらばするしかない。


「あの、それじゃ」
「ああ、引き留めてすまなかった」


……黙ってればイケメンなんだけどなあ。
残念すぎるとため息をつきながら雑木林を突っ切っていたら(子供の間では割と有名な抜け道だ)(裕介はあんまりいい顔をしないけど)、珍しくひめちゃんが姿を現した。


「ひめちゃん」
「……あの男、気になるわね」
「ひめちゃん!?」


まさか、ひめちゃんが恋!?
男なんか興味ないみたいなひめちゃんが!?

びっくりして振り返ったら、ものすごく難しい顔をしていた。
よかった、どうやらフォーリンラブな感じじゃなかったらしい。
ていうか、そもそもひめちゃんが人間の男を好きになるはずがなかった。

だがしかし、どうしていきなりそんなことを言い出すんだろうか。
首を傾げると、ひめちゃんは珍しく真面目な顔で口を開いた。


、幼馴染のあの子供に注意しなさい」
「裕介?なんで?」
「あの男、おそらく厄介なことを連れてきたわよ。あの子供とその連れが食いつかないわけないじゃない」
「…………やりそうだね」


さすがひめちゃん、裕介のことまでよくわかってる。

まで巻き込まれるんじゃないわよ、今度あの男にあっても無視しなさい、私の可愛いに何かあったら私が祟り殺してやる。

そんな物騒な言葉を最後だけすっごい笑顔で宣言したひめちゃんは、満足したのか「後でね」と軽く手を振って消えた。
子供ならよく通る道だから、誰かに見られる前に隠れてくれて助かった。
でも、厄介事か。
裕介が怪我でもしたら大変だ、一応軽く聞いてみよう。








美麗ママと楽しくおしゃべりしながらゲームをしていたら、思いの外早く裕介が帰ってきた。
いつもよりちょっと表情が硬いかな?ぐらいの違いだけど、いつも澄ました顔をしてるから珍しい。


「お帰りー」
「……、そこ違う。先にそれ取っちゃうと、後でアイテム取れなくなるよ」
「え、本当?しまった、セーブ全然してないや」
「まあ、また頑張れば?」


訊こうとした矢先にミスを教えられて、セーブしないままどんどん進めてきちゃった画面をガン見する。
……私の30分…………。

リセットしようか迷っていると、隣に座った裕介にコントローラーを取られてしまった。
ダンジョンをくるくる回って中ボスを倒されて、あっという間に伝説級の武器とか防具とか手に入っている。
ぽかんと見ていた私の手にコントローラーを戻しながら、裕介が小さく肩をすくめた。


「後は自分で頑張りなよ」
「あ、うん。ありがと」


とりあえずセーブだセーブ。
フィールドに出てセーブを済ませて、隣に座ったままの裕介の方を見る。
いつもの通りクールビューティーな無表情が、それで?と横に傾いた。


「何か用?」
「うん、変な人に会ったよ。多分電波系」
「……ちょっと。どんな奴?」
「地獄堂に行くって言ってた。見た目イケメンだけど、目に見えない物が見えますみたいなこと言ってたよ。裕介も気をつけてね」


知り合いかもなあと思ったけれど、あんな電波系と知り合いな裕介嫌だと思い直して付け足す。
裕介はものすごく嫌そうな顔になって肩をすくめた。


「……俺は平気だよ。こそ、今度そいつを見かけたらすぐに逃げること。声をかけられても無視。いいね?わかった?」
「うん」


こちらはうなずいたというのに、その後もしつこく何度も念押しされる。
いい加減うざくなったので、適当に返事をして家に帰った。
しかし誰だったんだろう、あの電波系。