「う……あああああぁぁぁぁあああぁああっ!!」
力の限りにセフィロスの背中を握りしめ、獣が吠えるように喉の奥から声を絞りだす。
激しく慟哭するを囲んで、3人は一様に沈痛な面持ちになった。
「帰りたい!帰りたい帰りたい還りたい!!みんなと同じところで眠りたい !!」
生きてほしいと、そう願って別れを選んだ。
こうしてつかの間の夢でしか会えなくなったとしても、それでもここに彼女を留まらせるということは、魂の消滅を意味したから。
だがしかし、こうして嘆くを見ると、あれが本当に正しい選択だったのかと後悔したくなった。
「クラウド クラウド!!」
会いたいと叫ぶ彼女は、迷子になった子供が母親を求めるかのようだ。
痛ましそうに目を細めたエアリスが、横からの頭を抱きしめた。
生きているのに、どうして会えないのか。
彼の隣にいるのは、どうしてティファなのか。
どうして自分ではないのか。
どうして、どうして、どうして !!
自分でも理解できていないであろう、どろどろに混じりあった感情は、魂だけのこの場では目をそらしたくなるほどに鮮明だ。
「……ごめんなさい」
勝手に飛ばしてしまって。
また故郷を奪ってしまって。
だれも貴女を知らない世界で、再び生きろと突きつけてしまって。
長い間泣き続けたは、声がかれた頃になってようやく落ちついた。
気遣わしげにハンカチを渡すエアリスに小さく微笑み、ありがとうとささやく。
「こうやって生きてて、みんなと話せるだけでも幸せ者だね、私」
想い人に会えなくとも、言葉を交わせなくとも、それでも幸せだと微笑む。
あまりにも欲のないその姿に、エアリスは思わず泣きたくなった。
「でも、誰もを知らないところで 」
「ああ、可愛い弟子が便宜をはかってくれるから問題ないよ。元々一度飛ばされた世界だったし」
「 は?」
ザックスがぱかりと口を開けた。
セフィロスもエアリスも驚いたように動きを止めた中で、が微笑みを小さな苦笑に変える。
「ミディールで、ライフストリームに呑まれた時。私だけ離れた場所に打ち上げられたのは、多分それが原因だね」
「 あ!!」
あの時、ライフストリームの中にの意識はなかった。
声をあげたエアリスとほぼ同時に、ザックスもそれに気づいたようだった。
一人セフィロスが訝しげにしているが、3人ともひとまずそれはおいておく。
「じゃあ、は独りじゃないの?」
「うん。目が覚めたらとりあえずケアルガかけて、脚を治すよ。その後、友達に会えると思うし」
「そっか」
嬉しそうに微笑んだに、エアリスの頬も自然とゆるむ。
独りで泣いていないならば、それでいい。
そのときに傍にいるのが自分達ではないのが少し寂しいけれど、そこはもう手出しができない領域だから。
死者は死者の、生者は生者の在るべき場所へ。
「でも、こんなに早くこっちにアクセスできるなんて、思ってもみなかったよ」
「俺達もびっくりしたぜ。そっちじゃまだ、1日ぐらいしか経ってないだろ?」
「うん、多分半日ぐらいかな?」
「すげえなあ」
感心したようにうなずいたザックスが、上から下までを眺める。
一通り見て異常がないことを確かめると、満足げに笑った。
「ん。魂だけだからあんまりあてになんねえけど、大丈夫そうだな。どっか痛いとこないか?」
「ありがと、今は大丈夫。両脚がっつりイッてるけど、ここではそういうのは問題ないみたい」
も笑って答えたのだが、それを聞いた瞬間、セフィロスが真顔でずずいと詰め寄ってきた。
思わずのけぞるの肩をがっしとつかみ、整った柳眉を顰める。
「痛めたのはどこだ」
「いや、ここでケアルガかけても意味ないっていうか、あんたのスーパーノヴァで折られたんだけど」
真顔のセフィロスにやはり真顔で返すと、セフィロスは酷く落ちこんだようだった。
無言で落ちこむセフィロスが心配になってそっと覗きこむと、するりと髪を一房絡みとられた。
「……すまない……」
うなだれて呟き、セフィロスは手の中の髪に唇を落とす。
そんな仕草も自然に様になるのが彼だったが、は迷わずその額をでこピンした。
「謝っても、もう何も元には戻らないでしょ?私に謝るなら、その分ジェノバの殲滅に全力を尽くして。ジェノバがこの程度でおとなしくなるなんて、私にはどうしても思えない」
何千年も眠りについておきながら、なお星を侵略せんと動いたジェノバ。
星と同化した程度で諦めるとは、到底思えなかった。
「 わかった。俺にできる限りのことをしよう」
その一人称が昔懐かしいものに戻っていると気づき、の笑顔が全開になる。
まだ誰も欠けていなかったあの頃。
いつまでもそんな日々が続くと、信じて疑わなかったあの頃。
セフィロスの言葉遣い一つで、思いは簡単に時を飛び越えることができた。
「よろしくね、セフィロス!頼りにしてるんだから」
軽く力をこめてその背を叩き、はエアリスとザックスに笑いかける。
「それじゃ私、そろそろ戻るね。また来れた時には、いっぱい話そう?」
「もちろん!色々話のネタ、用意しておくから、ね!」
「いつでも来いよ!どうせこっちは暇してんだし、遠慮はいらねえって」
そう。
この感じ、このリズム。
やっぱり、この人達と共にいる時間は心地いい。
「ほら、旦那も何か言えって」とザックスがセフィロスの肩に腕を回し、無言で正宗の鯉口をきられて。
わざと自分に見える範囲で追いかけっこを始めた2人に苦笑し、はふうわりと浮き上がる。
地面と言う概念がないこの場所では、己の意思一つで場が形成された。
「またね、みんな!」
「またね!!」
大きく手を振り返してくれたエアリスの姿を見届けたのを最後に、の意識は急速に浮き上がっていった。
直視するしかない現実へ、覚醒に向かって。
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