卒業も間近に近づいて、亮達は完全に自由登校になった。
親しい先輩のほとんどが外部に出てしまうと知っているから、がらんどうの教室が何だか寂しい。
お菓子売場が目立つようになった。
またこの時期かとうんざりするけれど、今年ばかりは蚊帳の外というわけにもいかない。
決着をつけよう。
亮達の卒業と共に、この思いにも。
そう決めたら、後は材料を揃えるだけ。
日吉はあまり甘いものを好まないから、チョコブラウニーぐらいがちょうどいいだろうか。
そんなことを考えつつ、鬼気迫る表情の女の子達の群の中に足を踏み入れる。
ミルクチョコの塊を買い物籠に放り込み、適当にほかの材料も見繕う。
家にある材料もあるから、この程度買えば充分だろう。
「 よし」
気合いを入れて、大きく一つ深呼吸。
バレンタインまで、あと4日。
「亮ー」
「ん?どうした」
「バレンタイン、何がいい?」
珍しい登校日。
久しぶりに4人揃ってお昼を食べながらそう訊いたら、何故か亮と鳳君がぎしりと固まった。
「お前なあ……」
「さん、ここで訊かなくても……」
「だって亮、最近予備校に籠もりっきりじゃない。いつ家にいるかわからないし、何度も行くの面倒じゃない」
「確かに正論だけど……」
諦めたように言う鳳君の顔色は、うっすらと青い。
ちらちらと窺うような視線の先には 日吉。
この流れのどこがおかしいんだろうか。
亮には毎年あげているし、ホワイトデーのお返しも毎年恒例だ。
今更騒ぎ立てるような話題ではないと思うんだけど……。
何故か日吉が不機嫌そうだ。
まさか、俺にも訊けと言うのだろうか。
冗談じゃない。
恥ずかしくて死ねる、そんなこと。
一応、それくらいの乙女回路は持ち合わせているつもりだ。
「あ、鳳君にも日吉にも渡すつもりだから」
だから、こうやって、平静を装って言うのが精一杯。
「あ、ありがとう」
「……ああ」
多少引きつった笑顔の鳳君に、まだ不機嫌そうな日吉。
だから、私にどうしろと。
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